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銀星糖

こちらは、キタユメ。様で連載中の「AXIS POWERS ヘタリア」のファンサイトです。二次創作を取り扱っておりますので苦手な方はご注意ください。


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請看我 (中日)


『モチモチ』さまより、念写写真ネタ。
日本のキャラ崩壊警報発令中です。



 
 

『心の中の大切な思い出、形に残してみませんか……? 最新超能力学が解明した手法で驚きの高画質! 一日10分の練習であなたにもできる☆念写マニュアル』(民明書房)



誰だ、こんなものを書いたのは。



畳の上に転がっていたその怪しげなマニュアルを拾い上げたとき、日本はやっと目の前の事態の原因を理解し、同時に嘆息した。
どこの書店で手に入れてきたのかは知らないが、突如として彼が念写など始めたのはこの本が原因だったのだ。



「ああ~、可愛いあるね、可愛いあるね……」



膨大な念写真に占領された居間の卓袱台を前に、中国は「可愛いある」を繰り返している。【相好を崩す】という言葉がぴったりすぎるくらいに当てはまるほど、その目尻は甘く垂れ下がり、そのうち写真に頬擦りでもしそうな雰囲気だ。



「まったくもう……。アルバム作りくらいご自宅でなさればよろしいのに」



これは何時いつの、これは何々の儀式の時、などとラベルをつけ、高価そうな唐紙を用いた切紙細工で周りを飾っては、ン千年前からの日本の成長アルバムを作る中国の楽しそうな背中を見やって、日本はお茶菓子の皿を下げながら、聞こえない程度の声でぶつぶつと零した。



「お夕飯は台所のテーブルで食べるしかなさそうですねぇ……」



すぐには片付きそうもない居間の様子にまたため息をつく。あの膨大な枚数の写真ときたら、いったいフィルムを何十本使ったのだろうか。しかし失敗作が皆無であるらしいところをみると、中国四千年の経験の前には、一日10分の練習とやらも不要だったようだ。



「あいやー、日本これ見るよろし。学問所で律令の講義があったときのお前あるよー。真剣な顔して筆持って、可愛いあるなぁ」



「ああ……何回目の遣唐使のときでしたっけ、これ」



「こっちはもうちょっと昔の、高句麗と新羅と二対一で喧嘩して硯を投げてるところあるな」



「え、嘘?! そんなんまで念写しなくてもいいじゃないですか!」



「高句麗が避けたせいで新羅に墨がダバッとかかって。あのころは結構なやんちゃぶりだったある」



こちらが忘れたようなことまで思い出してきては披露してくれるので、なんだかとても恥ずかしい。しかもそのはずかしい思い出の一ページを念写したものを、これから中国はアルバムにしようとしているのだ。(どうせなら三国志の名場面でも念写して歴史学に貢献すればいいものを!)
気恥ずかしさが収まらなくて、日本は早々に居間から退散することにした。夕食の支度に没頭すれば気分も変わる。今日はブリを照り焼きにして、付け合せにはネギを焼こう。お吸い物はワカメと豆腐、ミツバを入れて……。
美少女キャラのワンポイントが入った割烹着に袖を通して、日本は無理矢理、思考を主夫モードに切り替えた。







「ああ~~、可愛いあるね、ちっちゃい日本……! ほんっと可愛いある……」



夕食もそこそこに、「可愛いある」のエンドレスリピートは続いていた。野球中継が終わって日本が風呂から上がっても、まだ続いていた。
いいかげんうっとうしくなって、日本は早々に布団の用意をし、歯を磨いた。昼に押しかけてきてからずーっとデレデレした顔の中国を見ていると、なんだか段々イライラしてきたのだ。
疲れているのかもしれないし、明日に備えてもう寝てしまおう……



「ちっちゃい頃はこう、膝の上に抱っこして色々教えてやったものあるなぁ。ほんとにあの頃は楽しかったある……」



写真にばかり見入って、“昔は”“あの頃は”ばかり。
いや、別に中国さんが悪いことをしてるわけじゃない、この人は昔から私を可愛がってくれていて、だから……。でも何でしょう、喉のあたりに何かが引っかかっているような、この……



「ほらこの写真! ちっちゃい日本、寝顔も可愛いあるなぁ~」



「-------……ぅせ、………………く……………せんよ…………」



「ん、何か言ったあるか?」



写真を眺めながらのほほんと問う中国に、何故そんなに腹が立つのかもよくわからないまま、気がつけば日本は声を荒げていた。



「どうせもう可愛くありませんよ、残念ながら! 中国さんの馬鹿!!」



いきなり怒鳴られ、中国は写真を取り落として目を白黒させた。わけがわからないという顔で見上げられる。その表情を目の当たりにして、日本はカッと頬に血が上るのを感じた。



「---------っ……もう寝ます。おやすみなさい」



やや手荒く襖を開けて、寝室へ続く廊下を早足で渡って、日本はその場から逃げ出した。





  * * * * * 






「…………あいやー。びっくりある」



突然怒鳴ったかと思えば、すぐバツの悪そうな顔で逃げてしまった弟。あんな顔を見たのは何百年前だっただろうか。



「そういえば、ああいうところもあったあるな」



普段が恬淡とした無表情であるだけに、そのギャップにいつも驚かされるのだが、けっこう日本は怒りっぽいのだった。ただ、普段は何も言わないだけなのだ。子どもの頃も我慢の末にいきなり怒りを爆発させて、よく新羅と喧嘩していた。
まったく、昔とちっとも変わらない。



「もっとも、今日のは怒ったというよりは--------------」



中国は机の隅に置いてあったポラロイドカメラを両手で持って、虚空に向けてシャッターを切った。吐き出された一枚のポラをはたはたと遊ばせる。ほどなく浮かんできたのは、ふくれたほっぺをつつかれて余計にふくれた、狩衣姿の小さな子ども。
手のかかる子だ。構ってほしいなら分かるように言えばよいものを。



「素直じゃない子には、メッ、が必要あるよなぁ」



写真に写った子のことを言うように、しかしそれには似合わぬ艶な微笑で中国は呟いた。
日本は今ごろ、自己嫌悪しながら布団の中で丸まっているはずだ。いくら年寄りのサイクルで生活している彼といえど、九時のドラマも終わらぬ時刻では寝付けまい。
カメラと写真を放り出して、開け放されたままの襖から廊下に出る。中国は忍び足で日本の寝室を目指しながら、そっと口元をほころばせた。寝室に着いたら、さてなんと言ってあやしてやろうか。




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いんさまの描かれた、
『中国さんの異常な愛情~または私は如何にして心配するのを止めて日本を愛するようになったか~』
がとっても素敵だったので、つい書いてしまいました……!
あ、ちゃんとネタの使用許可はいただきましたので。いんさま、ありがとうございました! 




 

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