ラブ・イン・エレベーター

『ラブ・イン・エレベーター』って、ご存知ですか?

 

 

「いつも思い出すんですよ、エレベーターに乗ると」



日本はそう言いながら“閉”のボタンを押した。
その腕を掴んで引き寄せ、ちいさな唇を捕らえる。醒めた漆黒の瞳に見つめられて束の間、柔らかな感触に溺れる。
舌を触れ合わせ、絡め、軽く下唇を吸ったところで上昇が止まる。
緩んだ拘束を抜けて、彼はするりと扉の外へ。



「上りきったら、今度は下がり始めるんですよ」



廊下の奥へと歩き出す彼は、やはりわかっていないらしい。



ああ、この狂気が簡単に冷めなどするものか。
愚かなお前にどうやってわからせてやろう?




(『ラブ・イン・エレベーター』中島らも)



----------------------------------------------------------



件の話を読んだことのない人にはわからない内容で、申し訳ありません。
『白いメリーさん』に収録されているので、もしよろしければお読みください。