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銀星糖

こちらは、キタユメ。様で連載中の「AXIS POWERS ヘタリア」のファンサイトです。二次創作を取り扱っておりますので苦手な方はご注意ください。


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クリスマス記念

いつもご贔屓にしていただきまして、誠にありがとうございます。
陛下のお誕生日、およびクリスマスということで、お目汚しではありますが、御礼の品をご用意いたしました。




日本受けです。お相手は作中で……。
やや微エロです。お得意でない方はご注意ください。




























【恋人はサンタクロース?】






ぴんと張り詰めた夜気は冷たく凝って、闇に沈む小道を包んでいる。
するすると肺から抜け出していった呼気は白くけぶり、たちまちに散って夜に溶けていった。



車を出させましょう、と仰る陛下に丁重にお断りを申し上げて一人で帰ってきたのは、晴れた冬の空を眺めながら歩くのも悪くないと思ったからだ。今しも満ちようとしている月も、冬の大六角形も、凛と研ぎ澄まされた光を地上に滴らせている。
礼服の上に厚手のコートを着込み、白いカシミアのマフラーを厳重に巻きつけた日本は、ややゆっくりとした歩調で家路を辿った。道の両脇に広がる、刈り取られた跡を残す冬の田んぼには、明日は真っ白な霜が降りていることだろう。背の伸びた霜柱を踏むその感触を思い出して、日本は口許を綻ばせた。早起きをして、霜柱を探すのもいいかもしれない。
裏口の木戸を押し開けると、蝶番がさびた声を上げる。大掃除のついでにここも修理しようと決めて、頭の中で年末の買出しリストに書き加えた。



勝手口の鍵を出そうとしてキーケースを開けたとき、日本は異変に気づいた。
台所に灯りが燈っている。
朝出かけるときはちゃんと消したはずなのに。
さらに、風呂場の煙突からもうもうと湯気が立ち上っている。
日本がいくらハイテクの国とはいえ、家主の帰宅に合わせて自動的に沸いてくれるバスシステムなど、まだない。



緊張感が高まり、日本は足音をすぐに消した。息をひそめ、気配をだんだんと薄くしていく。
衣擦れの音に気を遣いながら勝手口のドアの横に張り付く。



(治安が悪化しているとはいえ、この家に空き巣が入るとは……。危機管理が足りないと、スイスさんに怒られるかもしれませんね)



しかも、家主不在をいいことに風呂まで拝借しようとは。ずうずうしい泥棒もいたものだ。
台所の古い板の間を歩き回る足音に耳を澄ます。日本より体格が良さそうではあるが、それほど大きな相手ではあるまい。台所の家具の位置、ドアからの動線を思い描いて、足音で敵の居場所を特定する。



拳を握って、静かに深呼吸をした。『突撃用意!!』頭の中で声が響く。日本は心の中でゆっくりと数を数え、全身の余分な力を削ぎ落とした。



六……五……四……三……二……一……



冷えたドアノブに手のひらを乗せる。
キィ、と微かな音を立てて、合板の扉の隙間から明るい光が漏れ出した。右手右足に力が籠もる。一気にドアを開けて踏み込み、革靴が上がりかまちにかかった、その時。



パァン!! と炸裂音がして、火薬の臭いが広がる。
色鮮やかな紙テープが降る中で呆然となる日本の目の前には、赤い塊が、クラッカーの残骸を構えて立っていた。



「おかえりー日本~~!!メリークリスマス☆」



「い……、イタリアくん?!」



赤いビロードの衣装を着込んだイタリアを前にして、日本の腕に籠もった力は抜け落ちた。のろのろと靴を脱いで家に上がると、イタリアにぎゅうっと抱きつかれた。



「どうやって家に……鍵がかかっていたでしょう? 私てっきり空き巣が入ったんだと思ってしまいましたよ! ああ、びっくりした……」



「ごめんなさい…。でも俺ね、今日サンタさんだから! 何でもできちゃうのだ~v それでね、日本が帰ってくるの待ってたんだ」



日本の頬に頬を寄せてハグの腕をほどくと、イタリアはコートと上着、マフラーを魔法めいた手際で脱がせた。用意したのだろうハンガーにそれらを掛け、代わりに半纏を渡してくれる。
紺色の半纏をドレスシャツの上に羽織って、日本は少しかじかんだ手で紐を結んだ。



「日本、ほっぺ冷たくなっちゃってるよ。早くストーブあたって」



手を引かれて台所の椅子に座る。横に置かれた古い石油ストーブがじんわりと熱をくれて、日本はほぅ、と息をついた。
イタリアが開け放たれたままだった扉を閉める。散らばった靴をきちんと揃えて、上がりかまちについた土を指先で払う。なんだかいつもと役割が逆のような気がして、日本は少しおかしく思った。



「ねぇ日本、ごはんはもう食べてきた? 何か飲む? それともお風呂にする? 」



新妻のような台詞と無邪気な笑顔が可愛らしくて、日本はついクスクスと笑いを漏らす。



「そうですね、ではお茶を少し」



はぁい、と返事をして戸棚に向かうイタリアに、着替えてきますと言い置いて、日本は席を立った。

 

 





 

ずずず……。と、緑茶を啜る音が響く。
イタリアが真剣に見つめるその前で湯飲みを置くと、日本はにっこりと笑った。



「おいしいですよ、イタリアくん」



「ほんと?! よかった~~。練習したんだよ、毎日!」



顔を輝かせるイタリアのくるんがぴこぴこと揺れる。引っ張ってみたいのを我慢しながら手を伸ばして、日本はその柔らかな髪を撫でた。とろけそうな笑顔が仔犬を思わせ、心が和む。



「それで、どうして今日はうちにお越しくださったんですか?」



「そうそれ!! あのね、あのね!」



イタリアは部屋の隅に置いてあった紙袋から、大き目の箱を取り出した。緑色の包装紙に包まれたそれを日本の膝に乗せる。名刺大の金色のカードには、“Merry Christmas”の文字。



「日本とクリスマスをお祝いしたかったんだけどね、明日の夜からヴァチカンでミサだから…。でもね、どうしても日本に逢いたくて、一日早く来たの!」



椅子に座った日本に覆いかぶさるように抱きつき、えへへ~、といたずらっ子のように笑う。日本もイタリアの背に腕を回す。ありがとうございます、と囁くと、ちゅっ、と頬にキスが落とされた。



「ですけど、事前に言って下さればもっと早く帰ってきましたのに…お一人で長い間お待たせしてしまって」



「いいんだよ、待ちたくて待ってたんだもん。びっくりさせたかったから連絡もしなかったんだもん」



でもいきなり来ちゃってごめんね? 疲れてるのに、迷惑だった?
小首を傾げて眉を八の字にするイタリアに、日本は首を振った。
本来なら寒い家に一人帰ってくるところだったのだ。暖かい部屋と優しい笑顔が待っていてくれるなんて、男やもめには何よりのプレゼントに決まっているではないか。



「かわいいサンタさんに来ていただけて嬉しいです」



「えー、カッコイイって言ってほしいのにぃ~」



ぷぷぷぷ、とむくれる様までが、じんわりと心を暖めてくれる。今日は幸せな日だ。



「プレゼント、開けてもよろしいでしょうか?」



「うん開けて開けて☆ 俺がんばって選んだんだよ~!」



リボンをほどいて、包装紙を破かないように丁寧に開封していく。白い厚紙でできた箱を開けると、ふんわりと甘い香りが漂った。
拳大の丸いボールがいくつも、紙製の緩衝材に包まれている。ピンク、黄色、薄紫、白など、色も様々だ。



「これは……入浴剤、ですか?」



「うん。日本ってお風呂すきでしょ? 使ってくれる?」



「もちろんです。ありがとうございます、イタリアくん」



お礼を言いながら、日本はあることに気がついた。
自分は、イタリアにまだ何も用意していない。
年に一度の行事で今日忙しかったのは確かなのだが、恋人にクリスマスプレゼントを用意できないなど、男としての沽券に関わるような気がする。いや、関わるに違いない。



「ねぇイタリアくん。もし良ければ、明日帰られる前に二人で買い物に行きませんか? 私からもクリスマスプレゼントを贈らせて下さい」



「ううん、いいの」



イタリアは首を振った。ですが、と言い募ろうとする日本の唇に人差し指をあてて、続く言葉を遮る。その代わり……、と日本の顔を覗き込む。きらきらした瞳に見つめられて、胸の鼓動が少し早くなった。



「何ですか? なんでも仰ってください」



「あのね、日本と一緒にお風呂に入りたいな。せっかく入浴剤買ってきたから…ダメ?」



遠慮がちなおねだりの言葉に、潤んで揺れる瞳が豆柴のようだ。こんなふうにねだられて、ダメと言えるわけがない。



「でも、そんなことでよろしいのですか?」



「いいの! 日本と一緒にお風呂に入りたいんだもん!」



もうタオルもパジャマも下着も二人分かごに入れて置いてあるし、お布団の用意だってしてあるんだよ。
本当に新妻のようにそう言って、イタリアはサンタの三角帽を脱いだ。ベルトも抜き取り、上着のボタンをはずす。袖から手を抜きながらスキップでお風呂場に向かう彼の後を、日本は入浴剤の箱を持って追いかけた。



「じゃあ、どれを使いましょうか。私はどれが何やらわかりませんし、イタリアくんが選んでください」



「んー、コレがいいかな」



箱の中から白いボールをつかみ出して、イタリアは日本の前で振ってみせる。ふんわりと漂う香りは、甘くておいしそうな……



「バニラだよ。クリスマスケーキを食べてる気分になれるよね、きっと♡♡」



ガラス戸を開けて、湯を張ったバスタブにボールを放り込む。たちまちシュワシュワと溶けていき、立ち上る湯けむりも甘いバニラの香りに変わった。



「早く入ろ! 背中流して、いっぱいサービスしてあげるからね!」



天使のように無邪気に笑って、イタリアは手早く服を脱いでいく。並んで着物の帯を解きながら、日本はこっそり息を整えた。



(本当に、イタリアくんってば……)



相手が自分のような枯れたジジイでなかったなら、この可愛い誘惑に耐え切れるかどうか。
一緒にお風呂に入るのも、“サービス”という単語も、イタリアにそんな意図がなくても曲解しようと思えばいくらでもできてしまう。しかも、日本ではクリスマスという行事はいわゆる“恋人たちの日”なわけで。



(かわいいサンタさん、いえ赤ずきんちゃんを食べてしまっても……いやいや)



日本男児として、年上として、そんな真似は……。
かぶりを振って、悶々と沸く煩悩を追い払う。まだキスだってちょっとしかしたことがないくらいなのだ。段階をすっとばしていきなりそんなことまでするなんて。
大丈夫、自分は年寄りだ。この試練、乗り切れるだけの人生経験?を積んできている。伊達に二千年以上生きているわけではないのだ。
心の中でぶつぶつと理性の糸にそう言い聞かせて、日本はタオルをきゅっと腰に巻いた。



「にほ~~ん、はやくはやくぅ!」



考えている間に、イタリアは早々と湯船に浸かっていたらしい。湯けむりの向こうから自分を呼ぶ声に返事を返して、日本は一度、洗面台の鏡で笑顔を練習した。下心をちゃんと包み隠せればいいのだけれど。



扉を開ければ、明るい笑顔が日本を迎えてくれる。湯気で薔薇色に上気した頬に視線を奪われぬようにしながら、日本はざぶり、とお湯を肩からかけ流した。
そろそろと湯船に足を入れて、イタリアから少し離れたところに腰を下ろす。白く濁った湯に肩まで沈むと、思わず至福のため息が漏れた。



「ねぇねぇ、どう? 俺のプレゼント」



「ええ、気持ちいいです。いい匂いですし、それに、家に帰ったらお風呂を用意して待っていてくれる人がいるなんて、今日は最高に幸せですよ」



なるべく視線を顔辺りに固定して、日本は言った。お湯が濁っていて本当によかったと思う。それでも湯から露出している肩など見れば、よからぬ思いがこぼれ出しそうで内心は戦々恐々だった。
イタリアは日本の心中の葛藤など知らぬげに、よかった~、と笑った。



「じゃあさ、お返しに、俺には日本をちょうだい?」



「え?」



手首を引き寄せられて、指に柔らかい唇の感触が降る。日本が目を瞬かせるのに、無邪気な笑みが向けられる。その笑顔が、一ミリだけ崩れていた。その一ミリに熱の色を灯して、イタリアは優しく、しかし抗えない力で日本を抱き寄せた。生身の肌が触れあい、日本の身体が強張る。



「ごめんね、でも俺、もう我慢してるの苦しくて……。日本ってば、無防備すぎるんだもん」



「や、ちょっとイタリアくん、待っ……ぁっ」



耳に触れたぬるりと温かい感触に、日本は小さな小さな声を上げた。ぞく、と走り抜けた不穏な感覚に思わず目をぎゅっと瞑る。その瞼を優しく啄ばんで、イタリアは囁いた。



「無理だよ、日本がかわいすぎるから、もう待てない」



でも大丈夫、全部俺に任せて? 優しくするから。



それは、自分が言うはずの台詞ではないのだろうか?
目の前にいるのは可愛くて無邪気な、自分の恋人のはずではなかっただろうか?
サンタさんの服を着ていた赤ずきんちゃんは、一体どこに行ってしまったのだろう?



混乱する思考は日本から判断力を奪った。はっと気づいたときにはもう、細身ではあるけれどもしなやかに筋肉のついた腕に閉じこめられて、悪戯な指先が滑り出している。身を捩っても、だめと言っても、事態はもう、どうにも。



「だいすきだよ、日本……Ti amo. Ti amo, da impazzire」



パシャッ、と、水が波立つ。
いつもより低めた甘い声で囁くと、サンタの皮を脱いだ狼さんは、本当の赤ずきんちゃんの首筋に優しくキスをした。

 





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きっかけは、柚本さまのお宅のトップを拝見したことでした……
本当は昨日のうちにアップする予定だったのですが、気に入らないところをいろいろ手直し
しているうちに、思い切り日付が変わっていました。
年賀状なんて後回しにすればよかった……!!



しかし、銀星糖で初の微エロが伊日ですよ。中日中心のはずだったのに…
伊日おそるべしですね。(これ以上書く根性がないので寸止めですが)



ええと、何人の方がご覧下さっているかわかりませんが、
うちからリンクさせていただいているサイトさまのみ、日頃の感謝とヨコシマな思いをこめてフリーとさせていただきたく思います。
もしお持ち帰りくださる方がいらっしゃいましたら、どうぞ一言恵んでやってくださいませ。



それでは、お読みいただきましてありがとうございました。
メリークリスマス!!

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