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銀星糖

こちらは、キタユメ。様で連載中の「AXIS POWERS ヘタリア」のファンサイトです。二次創作を取り扱っておりますので苦手な方はご注意ください。


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拍手ログ 6




中仔日 親子パラレル




















「いっちゃやぁ、です」



スーツの生地を握り締めるもみじのような手。こちらを見上げるうるうるの瞳。
ダイニングから玄関まで四歩半の狭苦しい廊下で、王耀は今、難敵と戦っている。



「き、菊……。我は仕事に行かなくちゃいけないある。遅れるとメーされるある。わかるか?」



「でも、やぁです」



小さな身体が、離れるものかと全身でしがみついてくる。
可愛い。可愛すぎる。この湧き上がってくるむずむずした幸せな感情に任せて、今日はずっと一緒にいてやりたくなってくる。だが、だが、しかし……。



「我が仕事に行かねば、来月からごはんも食べられないあるよ……?」



日曜も仕事でろくに構ってやれない自分が悪いのはわかっている。さみしい思いをさせどおしなのも、申し訳なく思っている。だがしかし。
日々の生活をつつがなく送るためには先立つものが必要なのだ。
目線の高さを合わせて、わかってくれと目で訴える。だが菊は強情だった。



「じゃあ、いっしょに、いきます。……いっしょに、おしごと、します」



涙をいっぱいに溜めて、首元に抱きつかれる。すん、と鼻をすする音。
耀はため息を押し隠して、菊の髪を撫でた。横目で時計を見る。8時10分。迷っている時間はなかった。

 







「で、連れてきたのかよ……!!」



「だって仕方なかったある! 今日は保育園もお休みで」



「だからって仕事に子連れで来るか普通?!」



パーティションで区切られたオフィスの奥で、耀は上司に言い訳をしていた。結局15分遅刻してしまった上、しゃべり始めたばかりの子どもというオマケ付きだ。何も言われないほうがおかしい。
しかし、そんなことに構う耀ではない。腕組みをしてふんぞり返る金髪の男をうらめしげに睨む。



「仕方なかったある。ほかの弟妹はどっちも全国模試で朝早く出てったね……。あんな小さな子どもを昼過ぎまで一人でほっとくわけにもいかんあるよ、そうだろ?
それに、『いっちゃやぁ、です』なぁんて瞳をウルウルさせられたらもう可愛すぎて……!!」



あの可愛らしさには、事務所所属の子役達だって敵いやしない。まして、『くたばれアーサー!』としか言わないようなどこぞのガキなんて比べるのもおこがましいほどだ。



「お前なぁ……今日は営業だろ。『ミュージックアワー』の出演枠獲りに行くのに、子供連れで行く気かよ」



「う…………」



マネージメント部長カークランド氏は大げさにため息をついてみせた。嫌な男だ。



「とりあえず、誰かヒマそうなやつに面倒みさせとくから外回りは一人で行け」



「教育上よろしくないようなヤツなんか宛がうんじゃないあるよ? あとスレた子役どもとかも近づけるないね、それから…」



「うるせぇ、早く行け!! イタリア兄弟の稼ぎが落ちたらお前のボーナス全額カットだ!!」



怒声とともに、耀は部長室から蹴り出された。











暴力上司め、あとで給湯室の茶葉を全部、番茶の出涸らしを乾燥させたやつに入れ替えてやるあへん。
ぼやきながら机に戻ると、隣に用意されたミカン箱の机に向かって、菊が何かを描いていた。コピー用紙とたくさんの色ペンを与えたのは事務の女の子だろうか。



「きーく、何描いてるあるか?」



「あ、やっ、みちゃだめですっ」



あわてて紙の上に覆いかぶさって、菊は絵を隠してしまった。
なんだか、へこむ。



「そうあるか……じゃあ見ないあるから。これからお外に行って、ほかの会社の人と会ってくるある。その間、ここでおとなしく待ってるあるよ?」



そう言って、鞄を取ってオフィスの出口に向かう。なんだか靴が重たく感じる。第一次反抗期が始まったあるか……



「あ、まって……!」



「あいやぁ?!」



膝裏にタックルされ、あわてて壁際のファイル棚に手を付いた。たたらを踏んだ左足の、小指が棚の角にガツンと当たる。うめき声も出ないほど痛い。
涙目で見下ろすと、右脚にくっついた、ぷくぷくしたやわらかい重みが口を開いた。



「あの、ちゃんとかけたら、みてもいいです……」



恥ずかしそうに、上目遣いでそんな風に言われたら。



「き、菊……かわいいあるぅぅぅ~~!」



「耀!!さっさと仕事行けっつってんだろー?!!」



上司の怒鳴り声も小指の痛みも銀河の彼方に吹っ飛んでしまうというものです。






   * * * * * *


 

でれでれした顔のまま、オフィスを追い立てられて仕事に向かった王耀だったが、二時間もしないうちに電話をかけてきて、菊の様子はどうだ、ごはんは一度そっちに戻るアル、とかなんとかウルサイことこの上なかった。



「それよりお前、出演枠はちゃんと取ったのか? ちゃんと新曲の発売週に番組出られるんだろうな?」



『それはもうバッチリあるー。相手方からも『そちらの社長様によろしく』とのことあるよ』



「ならいい。さっさと戻ってこいよ、仕事はいくらでもあるんだからな」



電話を切って部屋を出る。耀の机の周りに女性事務員が数人集まって、しきりに子どもを構っていた。輪の真ん中の子どもは筒状に丸めてリボンをした紙を大事そうに持っている。



「菊くん、もうひらがなが書けるの? えらいわぁ」



「賢いのねぇ~。いま何歳?」



「みっつ、です」



少し人見知りする性格なのか、おずおずと答えているさまは可愛らしい。
と、その黒い瞳がこちらの接近をとらえたようだ。菊はあとずさると、アーサーから紙筒(おそらくさっき描いていた絵だろう)を隠そうと、手に持ったそれを背中へやった。



「な、なんで」



ちょっとショック。
あっけにとられた顔を見て、事務の女の子達は笑い出す。



「部長が王さんのこと怒鳴ってたから、怖がってるんですよぉ」



「菊くん、大丈夫よぉ。このオジサンがプレゼントを盗ろうとしたら、お姉さんたちがやっつけてあげるから」



けれども菊の警戒心はどうにも解けないようで。アーサーを睨みながら後ずさりを続け、しまいには紙筒を持って耀の机の下に潜り込んでしまった。笑い声がさらに大きくなる。



訂正。かなりショックかもしれない。



「……取らない。取らねぇってば。なぁ出てこいよ…………」



呼びかけても、ヤドカリは宿を出てこない。疑わしげな視線でアーサーを射抜いたまま、菊は紙筒をそっと抱きしめた。



「なぁ、そのプレゼント、何だ? って、あぁそうか」



カレンダーを見る。今日は五月の第二日曜。



「今日、母の日だもんな……」



あの親ばかが帰ってきたら、また騒ぎやがるんだろうな。けど……
こんなに可愛かったら、しょうがないか。

 





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中国さん家は、



・中国さん(家長・社会人)
・台湾さん(高校生)
・韓国(中学生)
・日本(三つ。親戚から引き取った)



って感じで考えてます。



中国さんは、会社(芸能事務所)では若手だけど敏腕のマネージャーです。
以下、どーでもよさげな会社のメンバー設定など。



【会社】
・カークランド部長
・イタリア兄弟 (人気ユニット)
・エーデルシュタイン先生 (音楽指導)
・ヘーデルヴァーリ社長
・アルフレッド (子役)
・ルートヴィッヒ (経理部長)



こんな感じでしょうか?


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