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銀星糖

こちらは、キタユメ。様で連載中の「AXIS POWERS ヘタリア」のファンサイトです。二次創作を取り扱っておりますので苦手な方はご注意ください。


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子どもと大人(中日?)

一筋縄ではいかないのです。











【子どもと大人】






「四日後から担当官と一緒に、外国を歴訪することになってるある」



それで、向こうの高官にお土産を持っていくある。



突然に日本の家を訪ねてきて、街に引っ張り出した迷惑千万な兄は、しごく何でもないことのようにそう言った。



「はぁ……」



それはいわゆる、袖の下というやつですか?
思っても口に出さないのは、それが迷惑な『兄弟』たち二人の長年のやり口だとよく知っているからだった。
それに、どういうルートにせよ自国の物品の宣伝になるのなら、それでもいいかとも思う。思うことにした。



デジカメに電子ピアノ、パソコン、小型液晶テレビ、食器洗い機などなど。
自国政府のお偉いさん名義のカードで大量の注文をして電気店の店員を卒倒させた兄は、それらの品々を北京に配達するように指示し、意気揚々と店を後にした。
そしていま、最寄のラーメンチェーンでこってり味のラーメンをずるずると啜っている。
スープが着物に飛ばぬよう、細心の注意を払いながら食べる日本の横で、中国はドンブリに口を付けてスープを飲み干した。



「ぷは。日本のラーメンは旨いあるなぁ。我の家の料理にも負けんあるよ」

「お褒めいただき光栄です…」



ごちそうさまあるー、と合掌する笑顔は、四千歳にはとても見えない。
服の胸元にはやはり、点々とスープのシミが飛んでいる。
ああ、この人が帰ったら、彼の家のねえやさんは顔をしかめるに違いない。



「日本、はやく食べるよろし。まだ買うものが残ってるある」

「え、まだ何か買うんですか?!」



当然という顔で頷いた兄は、これから買うものを指折り数えはじめた。



「時計に、マウンテンバイク、化粧品……、ああそれとシャンプーあるな」

「それもお土産になさるんですか?」

「そうある。シンガポールに聞いたところによると、日本製の化粧品やシャンプーは大人気らしいあるからな」



そういえば、かの国の女性たちにはご愛顧いただいていると、何かの折に聞いた覚えがある。



「ほかに、お土産によさそうなものがあったら教えるよろし」

「さぁ……。韓国さんがこの間いらしたときは、業務用のカレールーとシチュールーをたくさん買っていかれましたけど…」



彼いわく、「俺ん家のルーは味が薄いんだぜ!!」だそうだ。



「しかし、中国さん。あなたの家にある陶磁器や絵画なども、いいお土産になるのではありませんか?」



幼いころにもらって、今も家にある品々を思い浮かべながらそう言うと、兄は頷いた。



「もちろん、我の家からも色々持っては行くある。けど、最新の電化製品はやっぱりお前の家のが最高級品あるからな」



政府高官に贈るのだから豪気にいかねばならない、らしい。



「諜報員にはどの人物が何を欲しがっているか、何が好みかまで調べ上げさせたある」

「で、シャンプーを欲しがる人までいたんですか?」

「奥方や娘さんがな」

「はぁ……」



この間サッカーの大会を共催したとき、もう一人の“兄”(彼の自称だが)が「あの辺りから来た理事はモノに弱かったんだぜ」と言っていたのを思い出す。
中国も、日本で買い込んだ品々を甘美な鼻薬にして、相手国の高官を篭絡するのだろう。
ODAをちらつかせるだけでも十分だろうに、念の入ったことだ。



早く早く、と子どものように急かす中国にため息をひとつ零して、日本はチャーシューを口に放り込んだ。









     ※ ※ ※










「今日はほんとに、疲れました……」

「あいやぁ、体力ないあるな。もっと食べて精つけるよろし」



結局あのあとドラッグストアでシャンプーとコンディショナーを箱買いし、スポーツ用品店で自転車を買い、デパートで時計を買い、ついでだからと中国自身が使う旅行鞄とスーツ一揃いまで買った。



サービスカウンターで宅配の手続きをしたあと、夕食のおかずを、とデパ地下で珍しい惣菜類やら、しまいにはケーキまで買って日本の家に戻ってきたのだが、私用の買い物にまで上司のカードを使ってしまってよかったのだろうか?



「ちょっとくらいわかんねーあるよ、多分」

「明細に“ローストビーフのサラダ”とか“特製エビチリ”とか出るんですよ? ぜったいバレますって……」

「我を買出しに使うあいつが悪いあるー。駄賃くらいもらわねーと割合わないね」



口を尖らせてそっぽを向いてみせる兄は、やはり四千歳にはとても見えない。歳をとると子ども返りするとかいうが、まさかソレだろうか。
キティちゃんのぬいぐるみを抱えて食後のデザートにケーキを頬張るその口元には、生クリームがちょこんと付いている。



「あーあ、しばらくは日本とご飯食べることもできないあるか……」



この人はずるい。無邪気な顔でさんざん振り回しておいて、またそんな風に。



「帰国してからの書類仕事含めて一月半くらいは遊びに来られねぇあるかなぁ…」

「それは大変ですね。がんばってください」



いちごをかじりながらそう返すと、そっけねぇある! と不満げな声があがった。
クリームついてますよ口元、と返して二つ目のケーキを選び始める。次はチョコケーキか、それともチーズスフレにするべきか。



「日本が冷たいある……。他の奴に電話して愚痴言ってやるある…」

「はいはい。韓国さんにですか、それとも台湾さんにですか?」

「うぅ~~っ、どっちもイヤあるぅ!」



よし、チーズスフレにしよう。
皿の上に乗せて、お茶を注ぎ足そうとしたら、もう急須が空だった。
お湯を注ごうと立ち上がる。と、中国がポットの前に陣取って、うらめしげな上目遣いを向けている。



「日本はいつからそんなに意地悪になったあるかぁ……あへんや美国のせいね、そうに違ぇねーある……あの若造ども……」

「はいはい、わかりましたよ、外国からお帰りになったら一度お電話を差し上げます。だから機嫌を直してください」



急須を脇に置き、しゃがみこんで兄の頭を撫でる。千年前には逆だったのにと思うと妙に愉快だ。
眉間に寄った皺まで可愛らしく思えて、ついニヨニヨしてしまう。余計にむくれた顔がたまらなくおもしろい。



「日本……我は兄あるよ?」

「はい、わかってますよ中国さん」



ふくれた頬をつついてみようと伸ばした手が、思いのほか強い力で掴まれる。



「ぅわ」



そのまま引っ張られて倒れこむと、秀麗な顔がぼやけるくらい近くにあった。



口蓋を舌で擦られて、視界が滲む。そのまま口内を一舐めされると、ぞくぞくと不穏な感覚が背筋を走り抜けた。



ちゅ、と下唇を吸って、中国は日本の瞳を覗き込む。



「お兄ちゃんの機嫌を取りたかったら、これくらいはするよろし」



浮かべられた笑みの妖艶さに負けて、日本はがっくりと頭を垂れる。中国は日本をぎゅっと抱きしめると、仕返しのように頭を撫でた。
クスクス笑う吐息が首筋にかかる。くすぐったい。くやしい。



どこまでも自分を振り回しつづける兄の笑声がシャクで、日本はむぅと眉根を寄せた。






--------ああ、この人は本当に、ずるい。






けれど、髪を撫でる手の柔さと、抱きしめる腕の温かさは、嫌いでは、ない。










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振り回されるばかりでくやしいと思ってる日本が書きたいなぁと思っていたら、こんなのが出来上がりました。
なんとかお兄ちゃんに勝ってみたい日本と、わがままで子どもっぽい中国さんと、老獪で大人の余裕を漂わせる中国さん。
いちおう、目指したのは中日です。そう見えたらいいんですけど……。






 

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