銀星糖
こちらは、キタユメ。様で連載中の「AXIS POWERS ヘタリア」のファンサイトです。二次創作を取り扱っておりますので苦手な方はご注意ください。
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日本とアメリカ 1946年
ふる花びらが、雪のように庭に舞っていた。
雇っているはずの家政婦は庭を掃いていないようで、花屑が一面に積もっている。花の盛りも過ぎかけて、そろそろ若葉が出そうな気配だ。
最近ようやく寝床から起き出しせるようになった日本は、このところ日がな一日縁側の柱にもたれて、庭をながめて過ごしていた。
「日本、庭の掃除をやらせなくていいのかい?」
「いやです。そのままにしておいてください」
億劫そうに、わずかに首を振って、日本は小さな声でそれだけ言った。俺が来たのに、視線を向けもしない。
日本の庭にある桜の木はずいぶん大きくて、どれだけ散らせても、まだ枝にはたくさんの花がついていた。その木がつぼみをふくらませ始めたころから日本は庭に面した部屋に寝床を移し、外ばかり見るようになった。つぼみが綻びた日からはもう、風が吹いただの雨が降っただのと花の具合を心配し、縁側からずっと動かない。毎日同じ花ばかり見て、よくも飽きないものだ。
「満開のいちばんきれいな時にだけ見るんじゃダメなのかい?」
「…………満開の花だけが美しいのではありません」
つぼみにも、咲き初めの花にも、散り際にも、花を散らせたあとの蘂にも、それぞれの美しさがあるのです。
つぶやいて、彼は縁側から下り、草履を履いた。頼りない足運びで庭に出て、空に張り出した枝を見上げる。花に誘われるように空へ手を伸ばすと、その指先を一片の花びらがかすめていく。それを合図に、花びらが一斉に舞いはじめる。
強く、はげしく、はかなく。吹雪のように、桜は散る。日本を包み、慰撫するかのように小さな背を滑り落ちていく薄紅。鶯色の羽織も、包帯の白も彼の黒髪も、すべてを夢のように染めかえて、桜は舞う。ひどく美しい、春の嵐だった。
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