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銀星糖

こちらは、キタユメ。様で連載中の「AXIS POWERS ヘタリア」のファンサイトです。二次創作を取り扱っておりますので苦手な方はご注意ください。


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大英帝国の流儀 2

イギリスと戦争とは。



今回はかなり短めです。











 

「そうでしたか。やはり、陛下は信じてはくださらなかったと」

真面目な面持ちで頷くと、ウォルシンガムはイギリスの手から書類を受け取った。爪を綺麗に切りそろえた神経質そうな指で、紙面をはじく。
黒檀の執務机の上には、各地から彼に寄せられた書簡が山積みになっている。ヨーロッパ全土に張り巡らされた諜報ネットワークが、常に新鮮な情報を運んでくるのだ。外交交渉ひとつにしても情報があるのとないのとでは大違いで、これまでもイギリス国家は何度もこのネットワークに救われていた。
今回のスペイン大艦隊建造の情報も、ある商人から送られてきたものだ。



「さて、先ほど入ってきた情報によりますと」



コニャックのグラスを二つローテーブルに置いて、彼はスペインの動向を述べ始めた。書き殴られたメモは、届いた報告をざっとまとめたものだろう。



「建材を大量に購入しているようです。それに伴って、国中の船大工を集めていますが、スペイン国内だけでは船大工の数が足りないようですね。完成までの時間が長くなるのなら、それはそれで結構なことですが」



彼は分厚い紙束を取り出してグラスの横に置いた。



「かの海軍についての、ちょっとした情報です」



指し示されるページを食い入るように見つめ、イギリスはウォルシンガムの説明に聞き入った。



おおまかにまとめると、以下のようなことだ。



スペイン海軍は、これまで地中海を主な戦場としてきたこと。
スペイン海軍は衝角(船の舳先に付けた槍状のもの)で敵船を串刺しにし、そこから敵船に乗り移って白兵戦を仕掛ける戦法が主流であること。
近い将来行われるであろう侵攻作戦においては、イギリス海軍と交戦してこれを殲滅の後、陸戦部隊をブリテン島に直接上陸させる作戦を取るであろうこと。ために、艦隊に陸軍兵士を満載してくる可能性が高いこと。
敵の主力をなす大型砲とイギリス海軍のカルヴェリン砲ならば、後者のほうが射程が長いこと。
イギリス海軍の船をすべて使っても、アルマダに対峙するための頭数が足りそうにないこと。
イギリスには大型戦艦が少ないが、スペインは大型艦を多数保有していること。
安定性があり操縦が簡便なイギリス船のほうが波の高い外海での戦闘には適していること。



手帳にペンを走らせながら、イギリスはだんだんと頭が冷えてくるのを感じていた。スペインの大艦隊が押し寄せてくると聞いたときに感じた焦りも恐怖も、急速に削げ落ちていく。チェスの盤面を眺めるように、付け入る隙を探して思考が回っていく。
しばらく黙考していたイギリスだったが、ふいにペンをインク壺に突っ込むと、手帳を書類の上に放り出した。



「ウォルシンガム卿、船大工のギルドや建築資材を扱う組合関係に人脈は?」



「まぁそれなりには。何かよいお考えがおありのようですね?」



「ああ。とりあえず金を用意しておいてほしい。掻き集められるだけ集めてくれ」



コニャックのグラスの縁を、手袋に包まれた指先がなぞる。緑の瞳に獅子の獰猛さと狐の狡知がきらめいた。



「スペインにとっておきの船をプレゼントしてやるぜ」



「…………。なるほど」



二人はまさに英国貴族のやり方で口の端をつり上げる。偶然にもその様子を映してしまった鏡の精は、震え上がって身を翻した。

 







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海戦にお詳しい方なら、ここでネタがわかってしまわれるかも……(ドキドキ)
短いうえに説明ぽい内容ですみません。



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