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銀星糖

こちらは、キタユメ。様で連載中の「AXIS POWERS ヘタリア」のファンサイトです。二次創作を取り扱っておりますので苦手な方はご注意ください。


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仏日











「あなたの愛の言葉を聞いた方は、いままでどれほどいらっしゃるのでしょうか」






その言葉自体は、ごく穏やかな声色で淡々と紡がれたものだった。
薄い目蓋がゆるりと持ち上げられ、少し上目遣いぎみの視線がフランスの青い目を捕らえる。
黒瑪瑙の瞳の奥にゆらめく熱は、まぎれもない嫉妬の色をしていた。






過去は過去、今の恋は今の恋。それが恋を楽しむ上での大前提。
嫉妬も恋に欠かせないスパイスの一つではあるけれど、自分はその味があまり好きではない。
ふりかけた途端に何もかもを重くさせるそれが、うっとうしく感じられたからだ。
いつもならその匂いがしただけでも、皿を遠ざけてしまうはずだった。






(どうしちまったんだ、俺)






体の内に、火がともる。それは甘く、心臓を焙った。
こんなにも甘く熱い感情を、腕の中の恋人はどうして起こさせるのだろう。








「今は、もう」






自分の声が、こんなにも、






「お前にだけだから」






震えて、熱を帯びることがあるなんて。






衝動のままに、日本にキスを落とす。髪に、額に、目蓋に、頬に。
耳にキスすると、あ、とかぼそい声がもれて、フランスの心臓にまた甘い波が押し寄せた。



すべての熱情を注いで、日本を攫ってしまいたい。
このままこの感情をぶつけたら、日本を壊してしまうかもしれない。
心の底で渦巻くとまどいさえも甘くて、苦しくて、狂おしい。
抱きしめる腕の力に背筋をしならせて、フランスさん、と甘い声音が囁く。






「全部ほしいけれど、私たちのような存在は、それが叶いませんから」






砂地に沁み入る水のように、言葉の滴が心を浸していく。






「せめて、二人で会えるときには、ありったけの甘い言葉をください」



あなたの言葉を、私だけのために、紡いでください。
私はまた、その言葉に恋をしますから。






胸をしめつける優しい疼痛に、吐く息がふるえた。日本の滑らかな頬に頬を寄せると、太陽の匂いがした。
目の奥が熱くて、きつく目を閉じる。身の内にあるすべての真摯さをこめて、フランスは言った。






「約束する」









髪をゆるゆると梳いていく指の温度も、
耳をくすぐるやわらかく澄んだ声も、
吐息に籠められた、自分以外の誰も知らないだろう情熱も。
すべてを腕の中に閉じ込めた。
一つたりとも逃すわけにはいかないと思った。
フランスがいま抱きとめているもの、それは幸せそのものだった。

 

 






【恋ひ恋ひて逢える時だにうるはしき言尽くしてよ長くと思はば】

 

 



 

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